★ お飲み物は何にされますか?
= 暑くなってきたのでアイスカフェをお願いします。
・・・あ、でも、“ドイツの”アイスカフェね。
微妙に生ぬるいコーヒーの上にバニラアイスと生クリームがのってるやつ(笑)。
できれば生クリームは少なめでお願いします。
★ ドイツで伴奏のプロとして活躍されていますが、伴奏で何が一番難しい?
= 難しいというか、一番大切だと思っているのは、いろんな意味において臨機応変・自由自在であることかな。
例えば最近、あるマスターコースでCelloクラスの伴奏を務めましたが、このような場合、立て続けに同じ曲を違う学生と弾くようなことがよくあります。
人が変われば同じ曲とはいえ、テンポも音楽的解釈も全然違う。
コレペティ(伴奏者)の仕事において、それらの微妙な違いにすばやく対応できるための敏感な”耳“は必須だと思います。
★ 相性とかもある?
= そうですね。
音楽的な意味においても、人間的な意味においても、多かれ少なかれ相性の良し悪しはやっぱりあると思います。
★ 伴奏者としての才能、ソリストとしての才能は違うもの?
= 才能が違う、ということはないと思います。
ピアノを弾く技術も、音楽を表現する力も、基本的な部分で求められているものはソロでも室内楽(伴奏)でも同じです。
★ 水垣さんは主にチェロ・コントラバスの専任伴奏者をされていますが、どのような特徴がありますか?
= 特徴というと楽器の特徴ですか?
チェロもコントラバスも低音楽器なだけにやっぱり大きいですよね。
特にコントラバスは私よりも背が高くて、約10キロと重いので持ち運びも大変そうです。
そのためバス奏者は90%強が男性なのではと思いますが、サン・サーンスの「動物の謝肉祭」の『象』のメロディーみたいに、バス弾きさんにはゆったり身体が大きくて性格ものんびりした人が多いような気がします。
チェロは、なんといっても音色が素敵です。
チェロが奏でる音域がちょうど人間の声の音域と似ているせいか、聴いていてちょうど耳に心地よいんですよね。
奏法も、楽器を抱え込むようにして弾くので、同様に「動物の謝肉祭」の『白鳥』から想像できるように、視覚的にも聴覚的にも色っぽい楽器だと思います。
もともと低音楽器が大好きなのですが、でもチェロ・コントラバスだけに限らず弦楽器は全部好きですね。
バイオリンもビオラも、それぞれ本当に魅力的な楽器です。
★ 演奏するにあたりいつも心がけている事はありますか?
= 音楽への感動を常に忘れないこと、かな。
★ 今の言葉、じ~んときました。私も同じです。
= ピアノの演奏でもあき子さんに“じ~~ん”として頂けるよう、これからも精進いたします(笑)
★ ドイツにはもう何年住んでいますか?
= 2009年5月23日に11周年を迎えました!
ワイマール音大へまず最初に学生として来て、そのままワイマール音大で働き始めたので、ドイツ在住・ワイマール在住共に11年です。
★ ワイマールに11年在住!長いですね。
さあ、ここで水垣さんにワイマールのお勧めスポットをご紹介して頂きましょう♪
= やっぱりなんといってもゲーテ公園ですね。
公園といっても、一つの森くらいの広さがあります。きちんと整備されているので散歩にも最適だし、春・夏は緑がとても美しく、秋は紅葉が素晴らしいし、冬の雪景色も本当に素敵です。
この公園で一年に何度かびっくりさせられるのが、羊の大群です!!
100頭、もしくはそれ以上いるのかな・・・
「めへぇぇぇぇぇぇ」「めっえへへぇぇぇ」ってなんとも言えない音が聞こえるなぁってふと見ると、目の前に恐ろしい数の羊の大群が!!初めて見たときはあまりの衝撃に思わず爆笑してしまいました。
(今でも遭遇するとちょっと興奮しますけど。笑)
定期的に近くの酪農家から草を食べに公園まで降りてきているらしいです。
のどかないい街ですよね、ワイマール。(笑)
★ ワイマール、いいですよね。私も大好きです。
色々ドイツ国内も旅行していると思いますが、印象的な町はどこですか?
= 私は、BerlinやMuenchenといった大都市よりも小さな田舎街のほうが好きで、お気に入りの可愛らしい街はいくつかあるんですけど、ドイツで一番印象的なのはどこと聞かれると、やっぱりライン河沿いの街かな。
11年前ドイツに来て、音大入学の前に語学学校に2ヶ月通ったんですが、それがライン河沿いにあるBoppardという小さな街だったんですね。
言葉も何もかも全くわからず不安で仕方なかったころの自分が、初めて長期間腰を据えて暮らして、友達を作って、楽しい思い出を作って、とにかく一生懸命だった場所だからかな。
たった2ヶ月しか暮らしていないけど、今でもあの辺りに行くと、「ただいま」っていう気持ちになるんです。
★ 素敵な思い出ですね。ドイツ生活が長い水垣さん、これは便利だと思う日本のものは?
= 油取り紙ですね。(笑)
こっちの人の肌って乾燥しているので必要ないのか、日本女性には必需品の油取り紙、どこにも売ってません。
なので、日本に一時帰国の際にはいつも買いだめしてます。
あと、日本の一般主婦が発明したような、「らくらくとれ~~る」みたいな商品名がついてる生活用品!(笑)
思わず(すごい・・・)とうなるような作品(?)が目白押しで、日本人の生活の知恵には脱帽です。
日本滞在中、生活雑貨コーナーを延々物色してしまいます(笑)
★ あはは。ドイツでの生活のここがいい!というところは?
= 日本での、「○○でなければならない」「なんで??」「だって・・・それが常識だから!」
というような概念があまりないことかな?
服装にも、立場にも、年齢にも、日本ほどは縛られないですね。まさに個人主義です。
★ 本当にそうですよね。逆にドイツ生活のどこが嫌?
= 自己主張が激しすぎて人の話を聞かないところ。
例えば会議中、2-3人が同時に自分の意見をまくしたてていることなんてしょっちゅうです。
友達同士で話していても、私が全く最後まで話し終えてないにもかかわらず、何か言いたいことがある時点で彼らの意見をマシンガンのようにまくしたてられます。
『最後まできけ~~!!!!まだ話は途中だ~~!!!』って、こっちがはっきりと主張しなければ、消化不良のまま会話が終わることは必須なのです。
日本のように、建前と本音、相手を立てて自分は引く、場の空気を読む・・などの、大人社会において当たり前の常識は全く通用しません。
疲れます・・・たまに(苦笑)
★ すごくわかる(苦笑)!ドイツ生活が長いし、ホームシックにかかることは?
= 春夏秋冬を感じたとき。日本で昔、この時期にこういうことしたな~って思い出すとき。
↑一年中いつでもあります。
あと、「外人」である自分を感じたとき。
★ ドイツで思い出の出来事は?
= 初めてWeimarに足を踏み入れた1998年3月。
あの頃、まだ発展途上だったWeimarは、旧東ドイツの匂いがぷんぷん残った薄暗い街でした。
Fraunkfurt~Weimarへとどんどん暗い旧東ドイツに向かう電車の中で、胃がきりきり痛み出して
どうしようもなく不安だったことを思い出します。あれから11年・・・あっという間でした。
★ ドイツでの失敗談・笑い話などは?
= Weimarが属しているチューリンゲン州に、「Sulze」という名物料理があります。
すっごくお腹を空かせて入ったレストランでメニューを見ながら、「Sulze mit Bratkartoffeln(Sulzeとじゃがいものベーコン炒め)」を発見。
ジャガイモのベーコン炒め大好きな私は迷わずそれを注文。で、出てきた料理が・・・
Sulzeとは、豚肉の切り身をゼラチンで固めた冷たい固形で・・・大好きと言う方には申し訳ないのですが、私には一口食べた以外は受け付けられない料理でした。
空腹だったので、食べられない料理を注文してしまった悲しさといったら・・・
にも関わらず!
数年後、またもや同じような状況で、同じ料理を注文し、同じ悲しみを体験してしまったのです・・・・
それ以来、「Sulze」=食べられない料理、として胸に刻み込みました。
二度・・いや、三度と同じ過ちは繰り返しません!!
★ 水垣さんが日本に一時帰国されている時、どの瞬間に「日本に帰ってきたな~」と実感しますか?
= 空港に向かえに来てくれてる両親の顔をみたとき。
そして、待機してる車の中で嬉しくて吠えまくっている愛犬に会ったとき。
洗面所の鏡に写る自分の姿が腰辺りまで見えたとき(ドイツでは胸より上しか見えません。)(笑)
お皿を洗っていて腰に負担を感じたとき(流し台が低い・・)。
トイレに座った瞬間(おっとぉ?!)とやや尻もち気分を感じたとき(便座も低い・・・笑)。
でも、11年ドイツに暮らしていて、圧倒的にこっちで生活している時間が長いにも関わらず、日本の空港に降り立った瞬間、「え?ワイマール?何ですか、それ??」って気分になります。
祖国の持つ威力とは本当にすごいものです。
★ お忙しい水垣さんのストレス発散方法は?
= お酒・・・ですかね。(笑)
★ あはは。
= 友達に付き合ってもらって、機会があれば我を忘れる一歩(一秒?)手前くらいまで徹底的に飲んで、どーでもいいや~~って気分になって楽しみます。
★ でも飲みすぎに注意して下さいね。
ちなみに何のお酒が一番好きですか?
= コンサートの後の一杯目はやっぱりまずビール、かな?(笑)
★ でた!!(笑)
= でも、楽しみながらゆっくり飲むなら、辛口の赤ワインが好きですね。
あとは日本酒も好きですけど、ドイツではなかなか飲む機会がないので、美味しい日本酒も日本に帰る楽しみの一つです♪
★ 話は戻って(笑)、お気に入り・お勧めのクラシック曲は?
= ブラームスの交響曲1番、ラフマニノフのピアノ協2番・・・ってこれ、めっちゃのだめの影響みたいじゃないですか!!(爆笑)
いやいや、でも冗談抜きで、これらは何度聴いても大感動する曲です。「のだめ作者、ナイス選曲♪」です。
あとは、ショスタコービチとかストラビンスキーとか、傾向としてドイツ・ロシア系の重厚で暗くて、でもそこから復活する!みたいな雰囲気のある曲が好きみたいです。
もちろん、明るい曲も大好きですよ!(笑)
3月にあき子さんと共演した、シューベルトのピアノ5重奏『鱒』も、本当に不朽の名作ですよね♪♪
★ 今回みらいプロジェクトで再び私と共演しますね。
= 嬉しいし楽しみにしていますよ!
あき子さんは、正真正銘の「情熱のバイオリニスト」です。
あの観客を圧倒する熱い表現力、素晴らしいと思います。
★ 私とは何度も共演していますね。
= ドイツでもトリオを組んで活動していましたが、あき子さんとの共演はいつも良い意味での“スリリング”かな(笑)。
『あ、ここの音楽表現は毎回違う風に弾くから。本番どういう表現で弾くかは、本番のお楽しみ~(笑)
だから私の音楽よく察知してね。』
って言うので、コンサートを聴いているお客さんが楽しんでいるのと同じように、私もあき子さんとの本番中の瞬間瞬間を、(次はどうくるか?!)ってわくわくしながら楽しんでいます。
このへんはまぁ、同じ関西人同士の瞬発ノリ・ボケ・ツッコミ、なのかな?(笑)
★ 今後私と共演したい曲は?
= うふふ・・・・あき子さん、知ってるくせに・・・・。(笑)
あれですよ、あれ。
『ダッダダダダ ダッダダダダダッ♪♪』
★ ・・・。
あれですね(笑)わかってしまいましたよ。
= ラベルのツィガーヌとかも弾きたいなあ。
あ、あと忘れてはならないのが、“生きているうちに絶対一度は演奏したい曲”ブラームスのピアノ4重奏第一番gmoll。
★ そういえば次回のあきこカフェに推薦したいという方がいるとか?
= 私の知人が関西で助産師をしているんです。
この少子化時代に、出産の実情を語ってもらうのは興味深いかな?と思うのですが。
あっ、本人は病院名と名前は一応伏せたいとの事ですが、いいですか?
★ もちろんです。それでは次回は助産師をしているTさんにご来店して頂きましょう。
それでは8月23日コンサートでまた共演出来る事を楽しみにしています。ありがとうございました。
= はーい。
私も8月23日のコンサート、今からとても楽しみにしています♪
こちらこそどうもありがとうございました。